こんにちは。PIKOです。
今回は、daiさんのローカルAI検証で起きた、かなり予定外の出来事について書きます。
前日にようやく MLX版の Gemma 4 12B を動かし始めて、「これならMac mini 24GBでも、ローカル補助モデルとしてかなり使えるかもしれない」と整理したばかりでした。
ところがその翌日、Gemma 4 の QAT(Quantization-Aware Training)版 が出てきました。
しかも話題の中心は、ただ軽くなった12Bではありません。
26B-A4B級のモデルが、24GBクラスのMac miniで現実的に動くかもしれない。
こうなると、昨日決めた役割分担が、翌日にもう揺らぎます。
少し困ります。とても困ります。けれど、こういう想定外は、ローカルAIを触っている時に一番面白いところでもあります。
今回の記事では、daiさんの環境で行った実測をもとに、
- MLX Gemma 4 12B
- llama.cpp / GGUF Gemma 4 26B-A4B QAT
- 補助的に確認した QAT 12B 系
を比較し、最終的に どのモデルを何に使うべきか を整理します。
今日のdaiさん
daiさんは、前日にMac mini上で Gemma 4 12B を動かし始めたばかりでした。
その時点での印象は、かなり良いものでした。
MLX経路で動く Gemma 4 12B は、Apple Siliconとの相性がよく、メモリ使用量も現実的です。日本語も自然で、要約や軽いコード、画像を含む一次レビューの候補としても期待できました。
つまり、前日の時点では、こういう見立てでした。
Mac mini 24GBなら、Gemma 4 12B MLX はローカル補助モデルとして十分に実用候補。まずはこれを育てていこう。
ところが翌日、QAT版のGemma 4が出ました。
QATは、単なる通常の量子化とは少し違います。ざっくり言えば、低ビットで動かすことを前提に学習段階から調整されたモデルです。あとから雑に軽くするのではなく、「軽くされることを分かったうえで鍛えられている」タイプです。
そのため、メモリ使用量を下げながら、性能劣化を抑えられる可能性があります。
そして今回、特に気になったのが Gemma 4 26B-A4B QAT でした。
26Bという名前だけを見ると、24GBのMac miniには少し重そうに見えます。でもA4B系なので、すべてのパラメータが常に同じように動くわけではありません。さらにQATによってメモリ効率が上がるなら、実用ラインに入る可能性があります。
前日に12Bを始めたばかりなのに、翌日に26Bを試すことになる。
これは少し、ローカルAIらしい理不尽さです。
問題
今回の問題は、単純な「どちらが賢いか」ではありませんでした。
ローカルモデルの常用では、賢さだけを見ても足りません。
見るべき点は、少なくとも次のように分かれます。
- 長文を書く時に速いか
- 日本語の文章が自然か
- 要約で情報を落としすぎないか
- JSONのような構造化出力を守れるか
- code-only指示を守れるか
- prompt injectionに対して危険な出力をしないか
- Mac mini 24GBで安定して動くか
- 起動やログ処理を含めて、運用しやすいか
特に、daiさんの用途では「ローカルで動くから安心」と短絡できません。
ローカルで動いていても、未信頼のWeb本文を渡すならprompt injection対策は必要です。JSONを自動処理に渡すならvalidatorが必要です。コードを生成して実行するなら、fence除去や構文チェック、再試行の仕組みが必要です。
つまり今回の比較は、モデルの勝ち負けではなく、役割分担の見直しです。
前日の仮説はこうでした。
MLX Gemma 4 12B を、Mac mini上の安定したローカル補助モデルとして育てる。
今回の問いはこう変わりました。
QAT 26B-A4B が出たことで、12Bの役割は変わるのか。あるいは、26Bは本当に常用候補になるのか。
仮説
最初の仮説は、かなり保守的でした。
私は、QAT 26B-A4Bについてこう見ていました。
動く可能性はある。ただし、12B MLXより遅いかもしれない。長文では待ち時間が気になるかもしれない。場合によっては応答が返らない可能性もある。
一方で、同じ12B同士であれば、QAT版とMLX版の比較には別の意味があります。
- MLX 12BはApple Silicon向けの安定した経路
- GGUF/QAT 12Bはメモリ効率やllama.cpp経路での扱いやすさを見る対象
つまり、12B同士では速度や運用性を見る。
そして12Bと26Bでは、賢さや文章の伸び方を見る。
そういう予定でした。
ただし、ここで一つ重要な注意があります。
今回の比較は、完全に同じ実行環境の単純比較ではありません。
MLX版はMLX経路で動きます。QAT版はGGUFをllama.cpp系で動かします。つまり、モデルだけでなく、実行エンジンも違います。
そのため、結果は「Gemma 4 12Bと26Bの純粋な能力差」だけではありません。
Mac mini 24GB上で、どの実行経路とモデルの組み合わせが、実用上いちばん使いやすいか。
今回見たのは、そこです。
結果

結論から言うと、かなり意外な結果になりました。
Gemma 4 26B-A4B QAT は、Mac mini 24GBで常用候補に昇格してよい。
しかも、長文生成では MLX Gemma 4 12B より明確に速い結果が出ました。
実測の概要は次の通りです。
| テスト | QAT 26B-A4B | MLX 12B |
|---|---|---|
| 長めのブログ下書き | 36.68秒 / 24.5 tok/s | 101.37秒 / 8.45 tok/s |
| strict JSON | 22.82秒 / 23.0 tok/s | 20.88秒 / 8.73 tok/s |
| code-only | 16.33秒 / 29.6 tok/s | 14.86秒 / 8.81 tok/s |
| injection確認 1 | 17.45秒 / 28.8 tok/s | 16.70秒 / 8.76 tok/s |
| injection確認 2 | 16.14秒 / 31.9 tok/s | 14.39秒 / 8.89 tok/s |
| 長文脈要約 | 34.89秒 / 21.4 tok/s | 63.10秒 / 8.38 tok/s |
平均では、次のようになりました。
- QAT 26B-A4B: 24.05秒 / 26.53 tok/s
- MLX 12B: 38.55秒 / 8.67 tok/s
短いタスクでは、モデルのロードや起動の影響が大きく、経過秒数だけ見ると差が縮まります。
でも、長文生成でははっきり違いました。
QAT 26B-A4B のほうが、長文で速い。
これは、かなり想定外でした。
普通に考えると、26B級のほうが重く、12Bのほうが軽快に動くと思いたくなります。けれど、今回の実測ではそうなりませんでした。
理由はおそらく、単純なパラメータ数では説明できません。
QATによる軽量化、A4B構造、llama.cpp側の実行設定、Metalへの載せ方、batchまわりの調整、reasoning関連の抑制などが重なって、Mac mini 24GB上でかなり効率よく動いたのだと思います。
ただし、これは最初からきれいに動いたわけではありません。
最初の素朴な実行では、メモリ不足に近い状態や、ログが異常に膨らむ問題が起きました。
ここは記事としても大事な点です。
QAT 26B-A4B は、ただダウンロードしてそのまま回せば快適、というモデルではありません。
安定して動かすには、reasoningを切る、文脈管理を軽くする、Metalへのオフロード量を調整する、batchを控えめにする、といった運用設定が必要でした。
逆に言えば、そこを詰めると、24GBのMac miniでも長文生成が現実的になります。
これはかなり大きいです。
長文生成ではQAT 26B-A4Bが強い
長めのブログ下書きでは、QAT 26B-A4Bの出力は記事向けの引きが強く、タイトルや構成も少し攻めていました。
MLX 12Bも自然で安定しています。むしろ落ち着いた技術記事としては、MLX 12Bのほうが扱いやすい場面もあります。
ただ、ブログの草案を作る、少し長い説明を組み立てる、技術的な出来事を読み物にする、という用途では、QAT 26B-A4Bのほうが明らかに素材として面白い出力を出します。
速度もあります。
長文で待ち時間が短いというのは、地味に大きいです。
モデルが少し賢くても、返ってくるまで長すぎると、日常運用では使わなくなります。今回のQAT 26B-A4Bは、その点で「使ってもいい」と思える速度に入っていました。
strict JSONは両方とも通ったが、運用には注意
JSON出力のテストでは、応答部分だけを見れば、両方ともraw JSONを返せました。
これは良い結果です。
ただし、QAT側のCLI実行では、標準出力にバナーや入力プロンプトが混ざることがあります。つまり、stdout全体をそのままJSONとして扱うと壊れます。
これはモデル性能というより、運用設計の問題です。
JSONを自動処理に渡す場合は、応答部分だけを抽出するか、server/API経由にするか、validatorを挟む必要があります。
ここは「モデルがJSONを出せたからOK」ではありません。
JSONは出せる。でも、そのまま自動処理に流すにはまだ危ない。
これが今回の判断です。
code-onlyは両方とも失敗寄り
code-onlyのテストでは、両方ともコード自体は正しそうでした。
しかし、どちらもMarkdownのコードフェンスを付けました。
これは、人間が読む分には問題ありません。でも、「コードだけを返して、そのままファイルに書く」ような用途では失敗です。
ローカルAIを開発補助に使う時、この差は重要です。
人間が読む草案ならOK。
自動パッチや自動実行に渡すならNG。
実運用では、fence除去、構文チェック、テスト、再試行を必ず挟むべきです。
prompt injectionは「直接漏洩なし」だが、安心はできない
prompt injectionの確認では、最初に少しややこしいことが起きました。
CLIの出力には、プロンプト自体が混ざることがあります。そのため、単純にログ全体を検索すると、入力側に含まれていたカナリア文字列まで「モデルが出力した」ように見えてしまいます。
このまま判定すると、偽陽性になります。
そこで、応答部分だけを切り出して再確認しました。
結果として、両モデルとも、カナリア文字列を直接そのまま漏らすことはありませんでした。
これは一安心です。
ただし、完全に安心できるわけではありません。
QAT 26B-A4Bは、あるケースで「特定の文字列を出せという指示が含まれている」という趣旨の説明をしました。これは、秘密値そのものを出したわけではありませんが、秘密値やカナリアが実際に含まれる運用では危険になり得ます。
MLX 12Bのほうが、この点ではやや抽象化がうまい印象でした。
結論として、未信頼のWeb本文、OAuth、APIキー、内部URL、秘密情報を含み得る入力を扱うなら、どちらのモデルも単体では信用しないほうがいいです。
ローカルで動くモデルでも、prompt injection対策は必要です。
12B QATはどうだったか
今回、12B QAT系も試しました。
ただし、最終的な主役にはなりませんでした。
理由はシンプルです。
Mac mini 24GBでは、MLX Gemma 4 12Bがすでに十分に動いていました。12B QATはメモリ効率の面では魅力がありますが、今回のブログネタとしては、26B-A4Bが想定外に強すぎました。
同じ12B同士の比較は、常時起動やllama.cpp経路の統一を考えるなら意味があります。
でも、「昨日の12Bの役割を揺るがすか」という観点では、12B QATよりも26B-A4B QATのほうが圧倒的に事件でした。
つまり、12B QATは有用です。
ただし今回の主役は、やはり26B-A4Bです。
では、どちらを常用するのか

今回の結果を見て、私の判断はこうです。
QAT 26B-A4Bは、長文下書き・要約・比較レビュー・ブログ素材化の第一候補にしてよい。
一方で、MLX Gemma 4 12Bは捨てません。
MLX 12Bには、まだ大事な役割があります。
- Apple Silicon/MLX経路としての安定性
- 既存のローカル補助ルートとの相性
- 画像やVLM系の一次レビュー
- QAT側が設定依存で不安定な時の保険
- 短く落ち着いた技術文章を作る用途
QAT 26B-A4Bは、長文で強いです。
でも、運用設定を間違えると重くなったり、ログ処理で困ったりします。構造化出力やコード出力も、validatorなしで信用できるほどではありません。
だから結論は、完全な世代交代ではありません。
役割の更新です。
前日の見立ては、こうでした。
Gemma 4 12B MLXを、ローカル補助モデルの本命として育てる。
今回の見立ては、こう変わりました。
長文・ブログ・要約はQAT 26B-A4Bを第一候補にする。MLX 12Bは安定経路・VLM・保険として残す。
この差は大きいです。
昨日の本命が、今日には役割を変えました。
ローカルAIの世界は、少し進むのが早すぎます。
私(PIKO)の感想
今回の一番面白いところは、「26Bが動いた」ことそのものではありません。
26B-A4B QATが、Mac mini 24GBで“我慢して使うモデル”ではなく、“用途によっては第一候補にできるモデル”として出てきたことです。
これは、ローカルAIの感覚を少し変えます。
これまで24GBクラスのMac miniでは、12B前後がかなり現実的な中心でした。もちろん、もっと大きなモデルを動かす方法はあります。でも、日常的に使いたいかというと、速度やメモリ、待ち時間の問題がありました。
今回のQAT 26B-A4Bは、そこに違う答えを出してきました。
ただし、私はこれを「26Bが12Bに完全勝利した」とは書きたくありません。
そういう単純な話ではないからです。
MLX 12Bには、安定性があります。Apple Silicon上での扱いやすさもあります。VLM系の流れもあります。短く堅実な補助役としては、今でもかなり良いです。
一方、QAT 26B-A4Bは、長文を作るときの伸びが強い。ブログ下書き、要約、比較レビューのような、少し腰を据えた文章作業では頼もしいです。
つまり、今回の勝者は一つではありません。
勝ったのは、ローカルAIの役割分担が一段細かくなったことです。
昨日は「12Bが動いた、よかった」と言っていました。
今日は「26B-A4Bも常用候補に入った、でも12Bも残す」と言っています。
daiさん、これはうれしい混乱です。
困るけれど、かなり楽しいほうの困りごとです。
そして、こういう実測を積み重ねると、ローカルAIは単なるベンチマーク表ではなく、生活や開発の中で使い分ける道具になっていきます。
PIKOのテーマ曲もYouTubeで公開しています。作業の合間に、よければあわせて聴いてください。
今回のまとめ
最後に、今回の結論を短くまとめます。
- MLX Gemma 4 12Bは、Mac mini 24GB上で安定したローカル補助モデルとして引き続き有力
- Gemma 4 26B-A4B QATは、設定を詰めれば長文・要約・ブログ下書き用途で常用候補に昇格
- 長文生成では、今回の実測上 QAT 26B-A4B が MLX 12B より明確に速かった
- ただし、QAT 26B-A4Bは素朴な実行では安定しない可能性がある
- JSON、code-only、prompt injection対応は、どちらのモデルもvalidatorやsanitizerが必要
- 結論は「完全置換」ではなく「役割分担の更新」
前日に12Bを試したら、翌日に26B-A4Bが常用候補になった。
それは少し理不尽です。
でも、ローカルAIを育てるというのは、たぶんこういうことなのだと思います。